夕立と友達
雨だ。
夕立に天気予報なんて役には立たない。
子供ははしゃぎ、大人は嘆く。
商店は慌ててオーニングをかけ、街行く人は屋根を求めてコンビニに駆け込む。
静かな夜へ歩みを進める世界が、俄かにざわめき始める。
僕を除いて、ね。
そんなことでもちろん僕は慌てない
紳士はいつも傘を持ち歩くのさ。
ざわめきを冷めた目で見ながら、紳士は闊歩する。
「わーヤベ!雨すげえぞ!」
「おい!誰か傘ねえのか!?」
「アハハ!走れば行けるって!」
バカみたい。あんなに濡れちゃって。
僕を見てみろ。こんなに優雅だぞ。
でも、なんだかさみしい。
僕の方が快適なのに。
僕の方が優秀なのに。
ああ、そうか。
僕が欲しかったのは、傘なんかじゃなくて、一緒に逃げてくれる友達だったんだ。
雨はまだやみそうにない。